医療グループ向け診療材料等の共同購入支援

1.本業務の概要

1-1.本業務の背景・目的

  • サービス提供主体(医療機関)の供給過多による過当競争により収益が抑制される傾向にあり、多くの医療機関の収益は頭打ちになっている。あるいは今後も頭打ちになることが予測されている。新たな事業で、早期に収益を大幅に増加することが困難なため、コスト削減の必要性が高まっている状況にあり、特に診療材料費等のコスト削減は優先的な課題とされている。
  • そこで、今後の事業計画にて、コスト削減施策の一つとして、医療グループのスケールメリットを活かした組織的な共同購入の推進を掲げており、本業務にて実行計画を提案する。
  • 実行計画の策定にあたっては、その成功ポイントを対象品目の選定、担当組織の定義、契約事務プロセス標準化・システム化、業者情報管理の強化と考え、その実現方策と導入スケジュールを策定することを目的(成果)として作業を実施する。

1-2. 作業ステップ全体像(スケジュール)

  • 共同購入の業務をスタートするにあたり、まずは内部資料の収集、ヒアリングを実施し課題の抽出を行い、平行して品目分類ごとに分類されたマスタリストの作成が必須となる。
  • 今後、共同購入を継続的に実施して行くためには、取引業者における単価割引率、サービスレベル(対応スピード等)、信頼性を総合的に評価した上で、適正な業者を選定する必要があります。そのためには、業者情報を管理する基準やプロセスが必要であり、弊社では貴グループの業者情報管理の現状を確認した上で、今後必要となる対応策を検討します。
  • 下図のア〜エの共同購入の成功ポイントを踏まえた上で、本業務の作業ステップを、以下に示します。
    ※ただし、詳細な内容については、貴グループと協議の上、決定するものとします。

1-3. 検討対象範囲

  • 共同購入の導入対象となる組織範囲は、契約行為者(会計機関)が設置されている医療グループ本部及び全国とする。
  • また、一般的には医療機器や診療材料、医薬品、備品などが共同購入の対象となるが、本業務においては、他品目(医療情報の共有など連携による効果が見込めるもの)の共同購入の可能性を探るため、契約行為者が購買を担当する全品目を対象に検討を実施する。

1-4. 共同購入に向けた課題抽出と施策方向性の検討

(1)課題(仮説)の検討

 課題(仮説)の検討では、グループ対象施設の提供状況(必要に応じてヒアリングを実施)を元に、評価シートを用いて、共同購入品目選定基準購買担当組織契約事務プロセス・システム業者情報管理の共同購入の4つの成功ポイントを毎に現状の課題を確認し、他企業・団体の成功事例と比較した上で目指すべき方向性を明確にします。

 

(2)ヒアリング実施

 ヒアリングでは、「課題(仮説)の検討」にて整理した購買担当組織契約事務プロセス・システム業者情報管理の3つの成功ポイントに関する課題(仮説)を検証します。

 下図に共同購入で想定される課題と施策の方向性のサンプルを示します。

共同購入の実現に向けた対応の方向性は、概ね以下のように集約され、共同購入の実行計画策定にあたっては、これらの方向性に基づき、具体的な実現方策を検討することが必要と考えます。

(3)購買品目分類と優先度

 購買品目分類では、事業毎に、勘定科目の内訳情報に基づき購入品目のカテゴリを設定し、他企業・団体等の事例を活用しながら、品目カテゴリ別の共同購入の実現可能性の検証及び留意事項の整理を行います。品目カテゴリを「汎用品/専用品」、「事業支出(製品・サービスに直接使用するもの)/事業支出以外」に分類し、マスタリストを作成します。作成したマスタリストを基に購入金額や業者の特性を踏まえ、共同購入の実現可能性を検討します。

 弊社では、共同購入対象と判断した品目カテゴリに属する個々の品目は全て共同購入対象と判断し、個々の品目について共同購入対象が可能かどうかは、貴グループに判断していただき、必要に応じて交渉していく方法が有効と考えます。

2-1. 特性に応じた品目選定_取り組みの優先順位

 さらに、どの品目カテゴリに優先的に取り組むかによって、効率的に共同購入のコスト削減効果を得ることができるため、組織横断的に設定した共同購入の「難易度」及び「支出割合(支出額の大きい順から支出額を累積し全体支出額の70%を占める領域をA分類、70~95%をB分類、95%~100%をC分類と設定)」により、取り組みの優先順位を検討します。

 例えば、難易度が低く、支出割合が高い領域は、すぐに大きな効果が期待できる領域クイックヒット)であり、優先順位は最も高いものと考えます。

 ※ ただし、詳細な内容については、貴グループと協議の上、決定するものとします。 

2-2. 医療機器の購入における事例

◼ 対象品目の購入価格のベンチマーク化と定量的効果検証

 下図はある独立行政法人病院グループでの検証結果です。例えば、「X線テレビ装置」を購入した病院は5病院あるが、仮に仕様を統一して共同購入を実施し、最高割引率86.63%のB社の製品を一括購入したとすると、全体として約3,800万円支出を削減できたこととなります。

 また、同一品目「アロカ超音波診断装置 SSD-6500」を購入している病院は2病院ありますが、それぞれの落札業者であるF社G社で、割引率はそれぞれは72.28%と43.46%と異なっています。仮にG社で一括購入していれば、全体として約2,400万円支出を削減できたこととなります。

 このように、他病院の割引率等が確認できない購入体制では、適正な価格交渉ができません。そのため、購買情報を一元的に把握する共同購入の仕組みを構築することにより、医療事業全体の支出削減が可能となります

2-3. 事業特性に応じた体制整備

  • 契約業務を担当する事業別品目担当については、本部の事業部職員が担当するか、エリア代表施設を幹事としてその職員が担当するか、二通りの考え方があります。
  • 共同購入にあたっては、品目に関する専門的な知識に対応できることが重要となるため、事業別品目担当を本社の各事業部の職員が担当する場合とエリア代表施設職員が担当する場合で、専門性への対応力等を比較しました。
  • その結果、医療事業品目担当は、グループ本部と幹事クリニックが協力、一般会計・共通品目担当は、グループ本部管財課が事業別品目担当となることが望ましいと考えます。ただし、業務負荷が高くなることが想定されるため、業務効率化や人員配置の適正化を検討する必要があります。
  • 共同購入に関するノウハウ・知識が蓄積し、移管できるレベルまで体系的に整理された時点で、将来的には、共同購入に関する契約業務をアウトソーシングするといった方法も考えられます。
  • 共同購入担当組織を独立させることにより、共同購入担当としてのミッションがより明確化され、業績管理に基づいて組織を動機付けすることができ、共同購入の高度化(業務処理能力、交渉力アップ等)を推進できるようになります。
  • ただし、業務委託にあたっては、事業計画の策定や会計規則等の改訂などの準備作業が必要となるため、フィージビリティスタディ(事業可能性の調査・検証)を、できるだけ早い段階で実施しておく必要があると考えます。

2-4. 購買プロセス標準化 - 標準契約事務フロー(全体像)

2-5. 共同購入への参加推進 - 意識変革の手法

  • 共同購入を成功に導くためには、職員全員が一丸となって取り組みに参画していくことが必須となるため、職員の共同購入に対する意識レベルを段階的に高めていくための仕組みが必要になります。
  • 職員の共同購入への取り組み意識をより高次なレベルへと移行させるために、意思統一の場である各種会議の活用を中心としたコミュニケーション計画を策定し、説明会や研修会を開催していくことが重要と考えます。

2-6. 目標達成の成功ポイント

◼ 共同購入の実行及びそれに伴う契約業務の集約化に向けた方策を効率的に実現し、目標の迅速な達成を図る上では、以下の点に留意する必要があると考えます。